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“訪問記” 早春の京都山科めぐり その二

令和6年金剛薩埵修復記念拡大

今回は「早春の京都山科めぐり その一」の続き続編です。前回は主に小野駅周辺の神社仏閣などのご紹介でしたが、今回は目的であった隨心院の春季特別御開帳の様子や、山科の中心部である山科駅方面の神社仏閣などの観光地をご紹介します。

隨心院(ずいしんいん)春季特別御開帳

京都 随心院の総門

隨心院は小野小町にゆかりのあることで有名な寺院です。東京紙器ではこれまで何度か季節限定の切り絵御朱印の製作をお手伝いさせていただきました。お寺や御朱印については以前の記事でもご紹介していますので、是非そちらもご覧ください。

隨心院では、春季特別御開帳として2月17日(土)~3月12日(火)までの期間、重要文化財の秘仏である「如意輪観世音菩薩坐像」と「阿弥陀如来坐像」の2体の仏像を表書院で観ることができました。隨心院には「金剛薩埵坐像」という快慶作の秘仏がもう1体ありますが、現在修繕中で拝見することはできませんでした。

本来全身金箔でおおわれていたのではないかと思われる秘仏ですが、それぞれ平安時代から鎌倉時代頃の彫仏で、約千年の歳月を経て醸し出す重厚な雰囲気は歴史の重みを感じさせ、長い時を経たがゆえの存在感がありました。製作された当初は黄金に光り輝いていて、それは立派なお姿であったのだろうと想像できます。

隨心院(ずいしんいん)の800年記念事業

3体の秘仏は「門跡宣旨800年記念事業」の一貫で2021年から毎年1体ずつ修復されてきました。4月27日(土)からは「非公開文化財特別展」が開催され、改修工事された本堂で修復後初となる三尊揃ってのお披露目となります。記念事業につきましては、こちらクラウドファンディングのページで詳しくご紹介されていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。

隨心院 秘仏三体修復記念御朱印

また秘仏の修復記念として限定の御朱印も頒布されます。特殊な技法を使って作られた美しい御朱印ですので、是非お手に取っていただけたらと思います。各秘仏が修復されるごとに限定で頒布される御朱印で、今年はシリーズ最後になる「金剛薩埵坐像」の修復記念御朱印が4月頃から頒布開始とのこと。

令和6年金剛薩埵修復記念

徳林庵(とくりんあん)

ここからは山科区の中心地で、古くから京都の東側玄関口として栄えた山科駅方面のご紹介です。山科駅はJRと地下鉄東西線、京阪電鉄の3つの路線が交差している鉄道の交差点で、小野駅からは電車で10分ほどの距離にあります。

徳林庵は山科駅より京阪電鉄の線路沿いに東に歩いて15分ほどのところにあります。江戸時代の主要な街道の一つである東海道に面して建てられた六角のお堂です。この六角堂は、眼、耳、鼻、舌、身、意から起こる6つの欲を捨て去ることで角を取り、円満になりましょうという願いが込められていると言われています。

六角のお堂で思い出したのが法隆寺の夢殿です。
みなさんは夢殿が何角形かご存じでしょうか。

実は八角形になっています。その理由はいくつか説があるようですが、八角形は風水で“八方位”を表しており、全ての方角から幸せを引き寄せ邪気を払ってくれると考えられていたそうです。

昔は今よりも方角に深い意味があったということで、お寺や近くにある街・歴史的建造物との位置関係にも着目するとまた新たな発見がありそうですね。

徳林庵

諸羽神社(もろはじんじゃ)

徳林庵から北の山に向かって15分ほど歩くと、大変立派な鳥居と本殿が見えてきます。境内には、目が見えなくなって宮中を追われた天皇のご子息が琵琶を弾きながら座っていたとされる琵琶岩という岩があります。失明し出家した盲人などに琵琶や詩歌を教え、琵琶法師の祖神とされるお方で、江戸時代には多くの琵琶法師が集まって琵琶を弾いていたといわれています。

毘沙門堂(びしゃもんどう)

毘沙門堂を正面から

諸羽神社から毘沙門道を北へ15分ほど歩くと、毘沙門堂の名前で有名な天台宗出雲寺(いずもじ)到着します。山科盆地の北端に位置し、七福神の一つ毘沙門天を本尊とする寺院で春には樹齢150年のとても大きな毘沙門枝垂桜、秋には紅葉で大変有名です。京都観光のパンフレットなどにその美しい写真がしばしば使われます。

毘沙門堂の桜

ご本尊の毘沙門天は、勇ましい姿から勝負運のご利益のほか、商売繁盛、金運、福徳などのご利益があると言われています。寺院の襖絵には有名な「板戸の衝立の鯉」「雲龍図」があります。眼の向きや顔が見る角度によって変化するといった、特殊遠近技法で描かれたもので大変興味深く拝見することができます。

山科疏水(やましなそすい)

毘沙門堂より400mほど南に下ると山科疏水が現れます。山科疏水とは水量豊かな琵琶湖から京都へと水を運ぶ滋賀県大津市観音寺から京都府京都市伏見区堀詰町までの全長約20kmの人工の運河「琵琶湖疏水」の一部です。

京都は明治維新における事実上の東京遷都によって人口の約3分の1が減少し、「いずれ狐や狸の棲家になる」といわれました。しかし、京都と大津を結ぶ「希望の水路」琵琶湖疏水の建設に都市再生の望みを託し地方創生のモデルとなりました。

当時の京都年間予算の倍額をかけて水運、水力発電、工業用水、灌漑用水など様々な用途に有用なこの疎水は、延べ400万人の人員を投じた大工事の末に完成しました。

現在、琵琶湖大津港より南禅寺近くの蹴上(けあげ)まで約2時間観光船で観光を楽しむことができます。疏水の両岸には多くの桜の木があり、短い期間ではありますが、特に今の時期は美しい景色を楽しめるのではないでしょうか。

山科疏水の桜

さいごに

2回の訪問記はいかがでしたでしょうか。

今回の訪問では隨心院最寄りの小野駅周辺だけでなく、北の山科駅周辺地域まで足を伸ばしてみました。いずれも京都の中心部ほど人が多くなく平坦な道のりなので散歩には程よいところでした。また、隨心院から南へ行けば世界文化遺産にも登録されている「醍醐寺」があり、そちらへ足を伸ばしてみるのも楽しいかと思います。春の醍醐寺といえば太閤花見で有名です。いずれは訪れてみたいですね。

【参考サイト】

随心院

https://www.zuishinin.or.jp/

徳林庵(京都観光オフィシャルサイト)

https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=7&tourism_id=531

諸羽神社(3D画像)

https://www.biwakososui-vr.com/360vr/jp/moroha_shrine/

毘沙門堂

https://www.bishamon.or.jp/

琵琶湖疎水(京都市上下水道HP)

https://www.city.kyoto.lg.jp/suido/page/0000007153.html

山科区㏋

https://www.city.kyoto.lg.jp/yamasina/page/0000012095.html

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