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今こそ。海洋プラスチック問題のおさらい

東京紙器の会社HPをリニューアルしてしばらく経ちました。オウンドメディアとして記事を通じて様々なことを発信していこうという目的でリニューアルを行い、記事もそれなりにアップされてきました。

そんな記事の中でもPV数が多い人気記事に「紙vsプラスチックの不都合な真実」というものがあります。
21年6月にアップされたものですがいまだにPV数は多く、やはり脱プラ問題に関心のある方が多いと感じますね。

私も当時から比べて少し知識を付けましたので、このプラスチック問題についてもう少し具体的な内容をご紹介したいと思います。注目度の高い社会問題ですので、巷には嘘か真かわからないような話があふれていますが、出来るだけ学術的にも正確な情報をお伝えします。

 

廃棄プラスチックのルートと分類定義

プラスチックは適切な処理をされていれば、自然界への影響を最小限に抑えられますが、実際にはそのような処理をされずに廃棄されたプラスチックが膨大に溢れています。それらのプラスチックは河川等を通じて、最終的に海にたどり着くこととなります。
その量は年間約800万トンと言われています。(ダボス会議発表の報告書より)

海にたどりついたプラスチックには様々なものがあります。包装用、釣り具用、ペットボトルetc.. これらのプラスチックは海岸に堆積し、海を漂流しつつ、徐々に細かく破砕されていき、細かい粒子になっていきます。プラスチックは大きさによって、メソプラスチック(長さ5mm以上5cm以下)、マイクロプラスチック(長さ5mm以下)と分類されます。


メソプラスチック以上の大きさが引き起こす問題

よく海鳥や亀などが飲み込んだり絡まったりするものはメソプラスチック以上となります。特に大型の廃棄された釣り具(網など)は絡まったりしやすく、そのような被害を「ゴースト・フィッシング」と呼びます。

また、プラスチックは腐食分解せず丈夫で、しかも浮く(ものが多い)ために、生物や卵が付着して外来種を広い範囲に拡散してしまいます。そのため海洋生態系に影響を与えかねず、予期せぬ問題が生じる可能性があるのです。


プラスチックの毒性と汚染物質吸着

実はプラスチックそのものには毒性はありません。ただ食べても消化・分解はできませんし、プラスチックは石油から作られているためにポリ塩化ビフェニル(PCB)などの汚染物質を吸着しやすい性質を持ちます。プラスチックが海を漂流する間に汚染物質が吸着し、それを魚や貝等が誤食することで体内へ汚染物質が入り込むこととなり、食物連鎖によって海鳥がそれを食べてそこに汚染物質が集まり・・といったことも起こります。(生物濃縮)


マイクロプラスチックの行き着く先とホットスポット

マイクロプラスチックは先述の通り、長さ5mm以下に小さくなったプラスチックを総称しますが、余りに小さくなっている破片は追跡することができないため、実際にどの程度のマイクロプラスチックがあるのか、どこに流れ着くのかといったことはハッキリわかっていません。(重さから推測値を計算している研究結果などもあります)

一つ分かっていることは、日本周辺の海は世界中の海の中でもマイクロプラスチック量が多いホットスポットであるということです。
これには東アジア諸国においての廃棄プラスチック量が世界のどこよりも多いことも影響しているでしょう。

世界で適正に処理されていないプラスチックは年間約3,000万トンありますが、そのうち3分の2は東アジアで排出されているという集計があるそうです。(サイエンス誌掲載論文より)中でも、中国は1国で約890万トン/年を排出しており、ダントツで世界トップです。(日本は約14万トン/年)


マイクロプラスチックの引き起こす問題は(まだ)分かっていない

海洋を漂流するマイクロプラスチック量は年々増え続けますが、正直なところ生態系に及ぼす影響について学術的に確認された報告は現時点で無いようです。マイクロとはいえプラスチックですので、先述のように汚染物質吸着、誤食が起きているのは確実ですが、それが実際に障害を与えたという事例は無いのです。
しかし、マイクロプラスチックはどれくらいあるか、どこに行くかが分かっていないうえに、その小ささゆえ一旦広がれば回収は困難であり、何か実際に障害が起きてしまっても対処が不可能ということとなります。

あくまで現時点での障害報告が無いだけで、このペースで年々マイクロプラスチックが増え続ければどうなるかは分かりません。良い影響がでることはほとんどありえませんので、出来るだけ漂流するマイクロプラスチックがでないように予防することが重要と言えるでしょう。


問題を起こさないためにできること

日本はプラスチック管理についてのシステム化が進んでいるため、排出量全体の約99%は適正に処理されているそうです。つまり1%だけが環境に漏れ出しているわけですが、いわゆる開発途上国ではこの率が8割ほどあるところも珍しくないため、比較的優秀と言えます。たまに排出総量を取り上げ、日本は有数のプラ排出国!と言われたりもしますが、99%はリサイクルも含め適正に処理されているわけです。

しかし1%とはいえ毎年10万トン以上のプラスチックが環境を汚染してしまっているのも事実です。管理や分別、リサイクルをいくら徹底したところで1%を0%にすることはできないでしょう。そうするよりも母数を減らしたほうが早いということになります。


できることからでいい

前回の記事でも書いたように極端なやり方は長続きしません。プラスチックはもはや社会生活から切り離せないものですので、全てを置き換えたりすることは非現実的です。あくまで持続可能性を大事に、出来ることからやっていけばいいのです。

東アジアの海には1平方km当たり172万個のマイクロプラスチックがあると言われます。(参照
1つのマイクロプラスチックを約0.1mgとすると、172gです。例えば卓上カレンダーのプラスチックリングは部当たり4g相当(当社計測)です。またプラスチックハンガーは1つで軽くても50gほどあります。40部ほどのカレンダーやプラハンガー3つのプラスチック量が1平方kmのマイクロプラスチックと同じと考えると、身近にできるやり方でも効果があるのだと思えませんか?(弊社はカミハンガーリングレスカレンダーやってますから置き換えできますよー・・)ボソッ


まとめ

今回の記事を読んでいただけた人ならば、世の中では非常に不評であるプラ袋有料化にも多少の効果があるということが分かったのではないでしょうか。これからは脱プラをするかしないかではなく、どの程度するかという話になっていくと思います。島国且つ世界一の漂流プラスチックホットスポットがある日本なら尚更です。

紙の歴史は2000年、プラの歴史は100年です。(なお東京紙器の歴史は65年!)長い歴史で自然界との共存がはかられてきたと信じています。我々も紙を扱う会社として出来ることをやっていきたいと思います。

こんなこと紙でできる?というアイデアでok!いつでも問い合わせください。

 

“Ideaを形に。”
山田俊英
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