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印刷物加工でよくある加工不良の原因と対策

製造業において品質管理は極めて重要です。機能不全によって顧客に迷惑をかけることは勿論、場合によってはクレーム、訴訟、損害賠償など、自社がそれまで積み上げてきた信用を一気に崩しかねません。

 弊社のような印刷物加工業においても同じことが言えます。我々の業界では、機械製造と違って不良がでたら生き死に関わるといったようなことは基本的にありませんが、もともと紙という繊細なものを扱っているため、1つのミスが全工程のやり直しなどに容易に波及する危険があります。

 印刷物加工における不良にはどのようなものがあり、またどう対策をするのか、簡単に例を挙げていきたいと思います。

なお、打抜き加工に限らず、レーザー加工などにおいても通じるお話です。

代表的な加工不良

一般的にポストプレス加工で起こりやすい加工不良には以下のようなものがあります。

※印刷そのものの不良などは除きます

  1. 切断不良: 印刷物の切断が不均一で、端が不揃いになること。
  2. 筋入れ不良: 筋割れや筋目が不正確で、折れなかったり、意図しない折れ方になること。
  3. 見当不良:印刷と加工位置の位置関係が不正確であること。
  4. つなぎ不良:つなぎが強すぎ/弱すぎて、切り離せなかったり、落ちてしまうこと。
  5. 紙詰まり: 機械に紙が詰まり、加工が停止したり、紙が破損すること。
  6. 印刷物のにじみや滲み: 機械の油や汗、血が付着したり、ローラー痕などがつくこと。

セット不良:意図と異なる丁合やセット仕様になっていること。

ほとんどの場合は量産前に気づける

打抜きもレーザー加工も基本的には印刷後の加工となります。そして実際の量産加工前に必ず設定作業が入ります。その際に、切れるところがちゃんと切れているか、筋は間違いないか、見当が正しいか、ということをしっかりとチェックをしていきます。

 この部分をどう行っているか、どの程度時間をかけているかはそれぞれの会社によって異なります。設定作業時間とチェック時間を短くすればするほど、生産効率は上がりますが、品質は甘くなり、加工不良や、不良とは言えないまでも汚い仕上がりの製品が多くなってきます。

よって、①-④の不良というのは、時間をかければ量産前に気づけることが多い不良です。しかし100%量産前に気づけるものではなく、量産前に問題がなくとも加工中に起こる事故も当然あります。

筋入れ不良で一番多いのは筋割れで、設定が悪い、筋溝に紙粉がたまって起こるといった原因があります。また最近は少ないですが、型の刃欠け、穴にカスが詰まって穴の刃が欠けるといった事故も存在します。こういった、カスの詰まりなどは量産中に起こることが多いので、必ずしも全て量産前に気づけるものでもありません。

とはいえ、気のゆるみ、惰性のチェック(前やったのと同じで大丈夫だろう判断)によって事故の発覚が遅れることに違いはありません。特にリピート物は全く同じ仕様ならいいのですが若干変わっていたりすることもあり、その確認が不十分で不良がでるのはよくある話です。

不思議なことに、忙しい時期よりも忙しくない時期の方が事故は起こるものです。どんなときでも一定の品質を保てるように現場は適度な緊張感を持っておくべきということでしょう。

量産前には気づくのが難しい不良

⑤、⑥、⑦は量産中もしくは量産後になってから発覚することが多い不良です。紙詰まりは機械的に防ぐことができるので気づきやすいのですが、根本的に紙の斤量等が原因で起こることも多く、判明したところで解決するには仕様を変えなければいけないということになりかねません。よって、作業前の見積や提案段階で、しっかりと加工適正について正しい知識を持って伝えておくことが必要です。

 ⑥は抜き取り検品では見つからず、客先に納めてから見つかることが多い不良です。こうなってしまうと加工全量検品が必要になるなど大事にもなりやすく、加工業においては頭の痛い加工不良の典型例です。

 この原因は加工環境、ルールによるところが大きいので、工場内ルールをしっかりと定め、必ずそれを遵守するという環境、社内文化を整備することで予防することができるでしょう。 ⑦は大体の場合、営業側の確認不足で起こります。セットする場合は作業仕様書にやり方を記載しておくことが一般的だと思いますが、その時点で顧客意図と異なっているために発生することが多いです。きちんと顧客と仕様について確認をして同意を取っておくことが一番です。不明瞭な指示も混乱する原因ですね。

データバージョン管理の重要性

加工を委託する側も、例えばリピートの場合、前回と異なる部分はわかりやすく指摘していくことが大事です。

データのバージョン管理もやり取りが多くなると重要で、前のデータでAだったのに、最終データではA’になっていて、それが伝わっていない、もしくは口頭で伝えた(言った言わない問題)という事は非常に多いため、ファイル名を工夫する、しっかりと文面で変更点を記録・共有することが事故予防につながるでしょう。  仕様書にもデータファイルはこれですと明示しておく必要があるでしょう。

東京紙器のやっていること

弊社も恥ずかしながら今まで不良事故を起こしたことはゼロではありません。①-⑦の全てを経験しています。しかしそのたびに改善を行ってきました。

 現在は目的を達成したためやめてしまいましたが、ISOを取得してドキュメントでの管理を丁寧に行い、自社の慣習にとらわれない形で作業ルールを制定しました。

仕様書や生産管理システムの改善や見直しはずっと続けており、加工不良、作業ミス、営業側の仕様チェック漏れを出来る限り防ぐべく、仕組みづくりに励んでいます。

 これらISOに準拠したドキュメント、ワークフロー、作業工程を因数分解した形での工程管理、さらに加えて管理者や営業のダブルチェックなどによって品質を担保しています。  それでも100%事故を防ぐことは難しいので、万が一のためにビジネス保険にも加入しています。自社を守るためでもありますが、顧客の利益を守るためにもこういった保険に入っておくことも安心して仕事をご依頼いただくために必要だと考えています。

まとめ

印刷物に限らず製造業、加工業は事故を起こさず信用を積み重ねることが、会社の発展に何より大事だということは言うまでもありません。

しかし品質の維持は、生産性やコストとは反比例しがちなものです。いかにそのバランスを取って、顧客満足度を上げていくかが会社の実力と言えるのではないでしょうか。

今回はポストプレスでよくある加工不良についてお伝えしました。

これからも安心してご依頼いただける会社になるよう、努力してまいります!

紙加工についてのご相談はぜひ、お問合せフォームよりお願いいたします!

「Ideaを形に。」東京紙器株式会社

山田俊英
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