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【レーザーカット加工ガイド】レーザーカットの適正とは(焦げ・ヤニ・スス)

日々レーザーカットの加工をしていると、焦げが目立ちやすい紙や目立ちにくい紙、ススがでて汚れる紙…など、紙の種類によって結果が大きく違うことに驚かされます。

そこで、今回の記事では、レーザーカット加工における“焦げ・ヤニ・スス”の発生しやすさを基準に、紙の種類別に加工適性の良し悪しを解説します。
また、紙以外でも加工できる素材や様々な理由で加工NGとしている素材などをご紹介します。
加工素材の選定でお悩みの方は、ぜひご参考になれば幸いです。

弊社では、これまで様々な種類の紙を加工してきた経験から、比較的きれいに切れたものを「レーザーカット適性が高い」、加工後にススが出るなど品質に問題があると感じたものを「レーザーカット適性が低い」と表現し、弊社視点で評価をしています。

概要

弊社で使用している加工機は「Co2レーザー加工機」で、熱を利用するのが特徴です。発振器から照射されたレーザービームは、虫眼鏡で火を起こすのと同じような原理で、集光レンズによって1点に集められます。
集めた光が紙などの媒体へ吸収されると熱が発生するので、その熱を利用して加工を施しています。

※レーザー自体には熱が無いので、光を透過、反射、拡散させるような媒体(ガラスや金属等)は光を吸収しないため弊社の機械では加工ができません。

レーザーカットの「焦げ」や「変色」について

紙のレーザーカットは、前述の通りレーザー照射により発生した熱を利用して紙を切断している(焼き切るようなイメージ)ために、基本的に全く焦げや変色・黄ばみがないということはありません。

ただ、紙の種類によってその程度は様々で、ほとんど目立たない紙もあれば、ススまみれになるような紙まであります。
また、カットライン周辺に黄色っぽいもやもやとしたヤニが付着してしまうこともあります。

その結果は、加工機の種類やスペックによっても変わることがありますので、あくまで本記事でご紹介するのは、東京紙器のレーザーカットの適性結果としてご確認くださいね。

焦げが目立ちやすい場所

弊社で扱うレーザーカット加工機では、切断面+レーザー照射の当たる面(加工面)に焦げや黄ばみが目立ちやすいです。
そのため、弊社では基本的に印刷物などの用紙を「裏面」から加工をさせていただいております。
そうすることで、表面から見たときの仕上がりがより美しくなります。
※ハーフカットや彫刻を行う場合や、特に指定がある場合、印刷物の状態などによっては表面から加工することもあります。

非塗工紙

一般的に印刷用紙には、印刷インキの乗りが良いように表面塗工が施されている「塗工紙」が利用されています。
しかし、レーザーカット加工ではその塗工が焦げやススの原因となることがあります。
そのため、東京紙器ではファインペーパーやファンシーペーパーをはじめとする特殊印刷用紙の中から、表面塗工の無い「非塗工紙」や塗工の少ない「微塗工紙」に該当するような用紙をお勧めしております。
参考までに、弊社がこれまでの経験で比較的焦げやススの発生が少なかった用紙の銘柄をご紹介します。

白い紙

・OKACカード

・WPHO

・アラベール-FS

色のついた紙

・NTラシャ

・ビオトープGA-FS

・五感紙(荒目・細目)

・ディープマット

・レザック66

・里紙

厚めの紙

GAファイル

あくまでも一例ですので、上記以外で気になる銘柄がありましたら、校正カット(サンプルカット)をご依頼のうえ、仕上がりをご確認いただければと思います。

レーザーカット適正の低い紙

レーザーカット加工を行うと焦げやススが多く発生し、弊社では適性が低いと判断している紙もあります。

塗工紙
(アート紙・コート紙・マットコート紙など)

印刷インキの乗りが良いように表面に塗工が施された用紙で、印刷物によく使用されています。
前述の通り、表面塗工はレーザーカット加工との相性が悪く焦げなどの原因となります。塗工紙を加工すると、カットライン周辺に、煙やヤニによる黄ばみが生じることがあります。また、粉っぽいススが出ることもあるため、加工後にも汚れを発生させる恐れが有ります。

黒い紙

黒い紙は、その色のおかげで焦げや変色が目立ちません。
しかし、紙に含まれる黒の着色料の影響でススが多量に発生するのが特徴です。
黒い紙とレーザーカットの組み合わせは見栄えがしますが、ススによってパッケージや服などを汚してしまう恐れがありますので、ご利用の場面をよくお考えの上ご検討いただければと思います。
また、加工後の製品のお取り扱いには、十分ご注意ください。
なお、黒い紙でもススの発生がほとんど無い銘柄も稀にありますので、「黒い紙を使いたいけどススは極力避けたい」という場合は一度ご相談ください。

真っ白な紙

焦げやヤニは茶や黄色みがかった色なので、真っ白な紙の上に発生すると、少量でも気になります。
「ウルトラホワイト」より「ホワイト」、「ましろ」より「しろ」のように、真っ白より少し生成りの紙色を選んでいただいた方が、変色が目立ちにくくなります。
紙色を多少変えても問題ないという方は、一度ご検討いただければと思います。

厚い紙

用紙が厚ければ厚いほど、加工時にレーザーを高出力でゆっくり照射して加工する必要があるため、加工部分により大きな熱が加わります。
その影響で、焦げや煙が多く発生し、加工部周辺の変色が大きくなることがあります。
一方で、コピー用紙程度の薄い紙であれば、低出力で高速にカットできるので、適正の低い紙であっても比較的きれいに加工できる場合があります。

蒸着紙

蒸着紙は、アルミなどの金属を気化させ紙の表面に付着させることでメタリックなツヤを持たせた紙のことです。
蒸着紙は、概ねレーザーで加工できるのですが、カットライン周辺のメタリックな部分に白いモヤが生じたり、用紙表面が融解しカス残りが発生したり、基材との相性が悪くススが発生したりすることがあります。
ご希望の用紙によってはテストが必須になること、また、加工難易度を考慮し通常の用紙を加工する場合に比べて費用が高くなることがあるので、ご留意ください。
なお、蒸着紙同様にメタリックな表面加工をされた紙に、アルミ箔を貼合したものもありますが、これはアルミ箔がレーザーを反射するため加工できません。

PPやラミネート加工の表面処理がされている紙

PPやラミネートが溶け変形するためレーザーカット加工には不向きですが、片面PPであればデータ次第で加工できる可能性もあります。
ただし、加工難易度が高いため通常の加工より費用が高くなります。

紙以外のレーザーカットが可能な素材

弊社では薄物の紙のレーザーカットに特化しておりますが、レーザーには紙以外でも加工ができる素材があります。
経験がない素材でも一度チャレンジしてみますので、ぜひお気軽にご相談ください。

アクリル板

アクリルは1~3mm程度までであればカットや彫刻が可能です。
ただ、アクリルには製法上の違いで「押し出し板」と「キャスト板」という種類があり、カットをする場合は「押し出し板」の使用を推奨しております。
キャスト板は、板の厚み公差が大きいため、1枚の板内でもレーザーカットの焦点が合わない箇所が出るため、切れ不良の原因となってしまいます。

PET板

PET板は0.5~1mm厚程度までであればカットが可能です。
PETはアクリルと比較して耐熱性が低いため、レーザーの熱で切り口が少し溶けて盛り上がったようになるのが特徴です。
また、細かいカットを行おうとすると、加工部周辺に熱が集中し半融解状態になり形状が保てません。
そのため、繊細なデザインの表現には不向きです。
また、穴として落としたい部分のカスが、カット後に再度くっついてしまうことがあり、それを取る際に少しバリが残る可能性もあります。

木材

木材は、ベニヤの板材であれば3mm厚程度までカットや彫刻が可能です。
他の種類の木材はその硬さや密度によって加工できる厚みが変わるため、内容に応じてテストを行う必要があります。
木材の加工では、焦げ・ヤニ・ススが発生します。
そのため、加工断面は黒く焦げ、カットライン付近にはヤニによる変色が見られます。

MDF

MDFは木材チップを繊維化したものを再成形した中質繊維板と呼ばれるファイバーボードの一種ですが、3mm厚程度まで加工できます。
他の木材と同様に、加工断面は黒く焦げ、カットライン付近にはヤニによる変色が見られます。

段ボール(G段)

段ボールはG段(約1mm厚)までであれば比較的きれいに加工が可能ですが、A段やB段といった厚い素材になると、フルート部にある空気の影響で用紙の延焼が発生しやすく火災の危険性があるため、弊社では加工をお断りしております。
G段を加工する場合、焦げやススが発生しますが、それなりに細かい形状でも再現が可能です。

厚い素材

弊社で加工できる素材の厚みは概ね3mmまでとなります。
それ以上の厚みがあると、出力が足りず切りきれない可能性があります。
ただし彫刻ができる場合もありますので、加工をご検討中の素材がありましたら、まずは一度ご相談ください。
なお、厚ければ厚いほどゆっくりと時間をかけて加工する必要があるので、加工代が高価になります。

レーザーカットできない素材

塩化ビニル(塩ビ)

塩ビを燃焼させると、塩化水素という人体に有害なガスが発生します。
このガスは機械にも有害で故障の原因となるため、加工NGとしております。

F段以上の段ボール

F段以上の厚みの段ボールは、フルート部にある空気の影響で用紙の延焼が発生しやすく火災の危険性があるため、弊社では加工NGとしております。

金属や鉄
(それが貼ってある紙)

弊社の設備では加工できません。
専用設備をお持ちの工場へご相談ください。

ゴム

加工時に強い刺激臭がし粉塵が多く出るため、弊社では加工NGとしております。

皮革(レザー)

皮革を加工すると強い不快臭が発生するため、弊社では加工NGとしております。

鏡・鏡面仕上げをした素材

光を反射する素材の加工は、機械故障や怪我の恐れがあるので加工NGとしております。

サンドペーパー

やすり部分に鉄粉などレーザーを吸収しない素材が含まれるため、レーザーが乱反射し大変危険なため、加工NGとしております。


その他気になる素材がありましたら、事前にご相談ください。
ご希望に応じて調査と校正カット(サンプルカット)もご案内いたします。

まとめ

適正のある紙:NTラシャ、五感紙、アラベールなどの非塗工紙

適正の低い紙:コート紙、真っ白な紙、黒い紙(特にススに注意)

紙以外で加工可能なもの:アクリル、PET、MDF、G段段ボールなど

NG素材:金属、塩ビ、ゴム、皮革(レザー)、F段以上の段ボールなど

国内で流通しているだけでも紙の種類はあまりにも多く、まだまだ我々もカットをしたことがない紙がたくさんあります。
焦げや変色具合は加工してみないとわかりませんので、出来る限りご要望にお応えしたいと考えております。

みなさまも、レーザー加工との相性が気になる紙があればぜひ教えてくださいね!

その他ご質問やお問い合わせに

その他レーザーカット加工や彫刻に関するご相談がありましたら、東京紙器のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

お見積りご依頼の際には下記情報を添えてご連絡いただけるとスムーズです。

◎用紙銘柄/斤量
◎仕上がりサイズ
◎印刷、その他加工の有無と内容
◎数量
◎カットデータ(Adobe Illustratorのパスデータ)

お見積りに関する詳しい説明は、こちらの記事もご参照いただけますと幸いです。

データ作成でお困りの方は、以下の記事で詳しくご説明しておりますので、あわせてご確認ください。

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