「Ideaを形に。」—— 東京紙器が掲げるこの企業理念は、単なるスローガンではありません。顧客の漠然としたイメージや要望を、確かな技術力で具現化していく姿勢は、創業以来90年近く受け継がれてきました。
同社の歴史は、昭和32年にさかのぼります。当時は出版業界が隆盛を極め、少年誌や月刊誌などの付録制作を主力事業として成長してきました。
「月刊誌の付録は、当時の出版社にとって重要な差別化要素でした。数十万部、多い時は100万部を超える製品を手がけていました」と、2代目から3代目へとバトンを渡した現会長は当時を振り返ります。
少年倶楽部復刻版(軍艦三笠の模型付録打抜きを担当)
以来、時代の変遷とともに事業領域を拡大し、今では最新のレーザー加工技術を駆使した製品開発にも注力しています。「お客様の想いやアイデアを形にする」という理念は、世代を超えて脈々と受け継がれています。
IT業界での経験を持つ現社長の山田俊英氏は、バックオフィス業務からスタートし、徐々に経営全般へと携わるようになった異色の経歴の持ち主です。
「最初は経理の知識もなく、簿記の資格を取ることから始めました」と、着実に準備を重ねてきた道のりを振り返ります。
IT業界での営業経験は、現在の経営にも活きているといいます。
「お客様との接点の作り方や、ニーズの掘り起こし方など、異なる業界での経験が新しい視点をもたらしてくれています」。
特にインターネットを通じた受注の増加は、従来の紙加工業界では珍しい取り組みです。実際に顔を合わせることなく、メールでのやり取りだけで完結する案件も増えており、デジタル時代に即した業務形態への転換を図っています。
「業界の常識にとらわれず、新しい働き方を模索していく必要があります」と、変革への決意を語ります。
近年、特に注力しているのが、クリエイターとのコラボレーション事業です。レーザー加工技術を活かした切り絵作品や、神社仏閣向けの御朱印など、従来の紙加工の概念を超えた独創的な製品を次々と生み出しています。
「線間0.6ミリという精密な加工が可能なレーザー技術により、従来の型抜きでは実現できなかった繊細な表現が可能になりました。そういった新たな技術やアイデアを発信していくことで、新たな出会いや可能性が生まれます。まさに私たちの目指す『Ideaを形に。』という理念の本質でした。」と社長は語ります。
レーザーを使った紙加工とフラワーアレンジメントのコラボレーション作品(レーザー加工を担当)
また、クリエイターとの協業では、発注者と受注者という関係からスタートし、その後、お客様として新たなプロジェクトへと発展するケースも見られます。
「お客様の想いに寄り添い、一緒に実現方法を探る。その過程で、想定を超えた新しいアイデアが生まれることもあります。そして、そのアイデアが次の挑戦につながり、さらに多くの可能性を広げていく原動力になるのです。」と語るその言葉からは、協創に対する情熱が伝わってきます。
3代目は、2021年、コロナ禍という未曽有の危機の中での社長就任となりました。
「売上が3割減少する中での交代でしたが、これ以上悪くならないだろうという時期でもあり、むしろ変革のチャンスと捉えました」と、当時を振り返ります。実際、この危機を転機として、既存事業の見直しと新規事業の開拓を積極的に進めました。
特にレーザー加工事業は、この3年で5倍に成長。従来の商業印刷が減少する中、新たな収益の柱として確立しつつあります。
「『こんなことができないか?』というお客様の問いかけに対し、『どうすればできるのか』を考え抜く。その積み重ねが、事業の飛躍的な成長を支えています」と手応えを語ります。
豪華なポップアップカードがついたお菓子の箱(ポップアップカードの設計・製作を担当)
紙の需要そのものは減少傾向にありますが、東京紙器は逆にそこに可能性を見出しています。
「紙だからこそできる表現がある。プロジェクトの中には人々の思いをつなぐ架け橋になっているものもありますからね」。デジタル化が進む中でこそ、アナログな温かみを持つ紙の価値は高まるといいます
「次の手を打つタイミングに来ている」と意欲を見せる現社長。デジタル化や少子化など、取り巻く環境は厳しさを増していますが、「Ideaを形に。」という理念は、新たな可能性を切り拓く確かな指針となっています。
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